(どうしよう……このままじゃ負けちゃう、負けちゃうよ……)
観鈴は焦っていた。状況は五分とはいえ、戦いは明らかに美凪嬢に有利な流れとなっている。今出ているソーナンスが手負いの状態とはいえ、またカウンターやミラーコートで攻撃を跳ね返されるのではないかと、観鈴の思考は悪い方、悪い方へと流れている。
「落ち着け観鈴! まだお前の負けが確定したわけではない。冷静に戦況を分析し、死中に活を見出すのだ!!」
「往人さん……」
私はポケモンがどういうゲームか未だ把握していない。故にここで適切なアドバイスを観鈴に送ることは出来ない。今の私に出来るのは、観鈴に激励の言葉を投げ掛けることだけだ。
(往人さんが応援してくれてる。頑張らなきゃ……。落ち着いて観鈴。ソーナンスの反撃は脅威だけど、ぶつり攻撃ととくしゅ攻撃を冷静に使い分ければ……。
ううん、それじゃさっきまでと何にも変わらない。せめてなんかの状態異常を引き起こせればいいんだけど、しんぴのまもりがあるし……)
「……。あっ!」
観鈴は何かを閃いたのか、俯いていた顔をあげ、迷いのない表情で美凪嬢の方に目を向けた。
「またお願い、ラプラス!!」
観鈴が出したポケモンは、何と手負いのラプラスだった。
「ラプラスですか。とくしゅ攻撃しか持っていないラプラスを出すとは、勝負を捨てましたか、観鈴さん……?」
「ううん。勝負はこれからだよ! ラプラス、あやしいひかり!!」
観鈴は相手をこんらんさせるあやしいひかりをソーナンスに使った。しかし、ソーナンスのしんぴのまもりの効果はまだ切れておらず、ソーナンスを混乱させることはできなかった。
「ソーナンスのしんぴのまもりは未だ健在です……。何故そのような無駄な攻撃を行うのですか?」
「にはは。確かにしんぴのまもりがある限り、あやしいひかりは通用しない。けど、ソーナンスは状態異常攻撃を跳ね返すことはできないよ……」
「!?」
「だから、わたしがあやしいひかりを使い続ける限り、わたしのラプラスがダメージを受けることはない。そしてすばやさはわたしのラプラスが勝っている。なら、ここで取る戦法は、ソーナンスのしんぴのまもりの効果が切れるまであやしいひかりを使い続けることだよ!」
成程、一見弱点がないように見えるソーナンスにもこんな弱点があったのか。確かにカウンター攻撃は脅威だが、跳ね返せない状態異常攻撃を続ければ、ソーナンスは手も足も出せないのだ。つまり、観鈴はソーナンスのしんぴのまもりの効果が消えるまで、自分に絶対安全な状態で、状態異常攻撃を続けることが出来るのだ。
「……。お見事です、観鈴さん……」
「思えば、最初からこうすれば良かったんだね。ソーナンスは状態異常攻撃を跳ね返せないんだから、最初にこんらんさせれば良かったんだし。でも、わたしはソーナンスのカウンター攻撃を警戒して、とくしゅ攻撃しか持たないラプラスじゃ勝てないって思ってしまった。
それがすべての間違いの始まりだったんだよ。その思い込みのせいで、わたしはプテラを失ってしまった。でもね、もう負けないよ!」
その後観鈴は言葉通りあやしいひかりを連発し、数ターン後ソーナンスのしんぴのまもりの効果が切れ、ようやくソーナンスをこんらんさせることが出来たのだった。
「ラプラス、ハイドロポンプ!!」
そしてソーナンスがこんらんした次ターン、観鈴はハイドロポンプでソーナンスを攻撃した。当然美凪嬢はミラーコートを選択したのだが、こんらん状態で自らを攻撃してしまい、観鈴はダメージを受けなかった。これにより、美凪嬢のソーナンスのHPは3分の1以下まで減ってしまった。
「ラプラス、しんぴのまもり!」
次ターン、ここで一気にトドメを刺しにいくと思いきや、観鈴はしんぴのまもりを使ったのだった。
「この勝負はあと数ターンで終わる。だから次の戦いを見越してしんぴのまもりを使ったんだよ」
成程、遅かれ早かれソーナンスとの勝負は着く。故にこのターンは次の戦いを見越してしんぴのまもりを使ったのか。攻略本に寄れば、しんぴのまもりはポケモンを交代しても効果が続き、また、ソーナンスのカウンター攻撃を考えることなく使えるのだから、このタイミングで使うのは最良の手と言えるだろう。
「ラプラス、れいとうビーム!!」
「もう私のソーナンスに耐える力はありません……。ですが、ただでは死にません。観鈴さんのラプラスも”みちづれ”です……」
トドメの一撃にあたるれいとうビームを放った観鈴に対し、美凪嬢は自分がひんしになった時相手もひんし状態にするみちづれを使ったのだった。
これにより、観鈴のラプラスはソーナンスをひんし状態にしたと同時に、自らもひんし状態になったのだった。
「にはは。多分そう来るんじゃないかと思ってたよ」
しかし、ラプラスがひんし状態になった観鈴の顔は、至って冷静だった。
「HPがほとんど減らされていないポケモンがひんしじょうたいになっちゃったら観鈴ちんピンチになるから、敢えて手負いのラプラスで戦ったんだよ」
成程、相手をこんらんさせられる技を保有していたからだけではなく、美凪嬢がみちづれを使ってくることまで想定して、ラプラスを使用したのか。
ともかく、これにより互いの手持ちポケモンは残り2体となり、状況は依然として五分だ。しかし、先程の戦いにより、場の空気は確実に観鈴に流れた。私の声援は無事届き、見事観鈴は死中に活を見出したのだった。 |
第弐拾七話「そして……負けられない戰いは續く!」
「デンリュウ、頑張って!」
「マタドガス、ゴー……」
互いに残り2体となった次の試合、観鈴はでんきタイプのデンリュウを、美凪嬢はどくタイプのマタドガスを繰り出した。
「マタドガス、えんまく」
先攻は美凪嬢だった。美凪嬢は相手の命中率を下げるえんまくを繰り出したのだった。
「しんぴのまもりが防げるのは、あくまで状態異常攻撃。能力低下攻撃までは防げませんので……」
成程。しんぴのまもりはあらゆる異常から身を守る技だと思っていたが、能力を低下する以上攻撃までは防げないという訳か。観鈴は磐石の体勢で臨んだつもりだったが、その隙を美凪嬢に突かれたというわけか。
「デンリュウ、でんじは!」
対する観鈴は、相手をまひ状態にさせるでんじはを使った。命中率を下げられた観鈴だったが、この攻撃は何とか当てることが出来た。
「マタドガス、かげぶんしん……」
2ターン目、美凪嬢はまひの効果で技が出せなくなることはなく、自らの回避率を上げるかげぶんしんを使ったのだった。
「デンリュウ、かみなりパンチ!」
観鈴は相手を1割の確立で相手をまひ状態に出来るでんきタイプの技、かみなりパンチを繰り出した。しかし、自身の命中率が下げられていることに加え、美凪嬢が回避率を上げたことで観鈴の攻撃は外れたのだった。
(どうしよう……。デンリュウの持っている攻撃技は、かみなりパンチと、かみなりの2つ。どっちもそんなに命中精度が高い技じゃない。かみなりパンチでさえ当たりにくくなったんだから、かみなりはもっと当たらない。
美凪さんはまひしているからそんなに連続して攻撃はして来られないけど、こっちの攻撃も当たらないし……)
まひして技が出にくくなっているが回避率を上げている美凪嬢、自信の命中率を下げられている観鈴。この二人の状態を考えれば、この戦いが長期戦になるのは火を見るより明らかだった。
そして観鈴には、美凪嬢の戦略が見えていた。恐らくこちらのしんぴのまもりの効果が切れるのを待っているのだろうと。マタドガスはどくタイプの技を得意とする。だから、しんぴのまもりの効果が切れた瞬間を見計らい、こちらをどく状態にするのが狙いなのだと。
無論、まひ状態にあるのだから、そう簡単に事が運ぶとは限らない。しかし、時間が経てば経つ程自分が不利になるのは目に見えている。故に、観鈴はしんぴのまもりの効果が切れる前に、何としてでも勝利を掴みたかったのだった。
「デンリュウ、かみなり!」
3ターン目、観鈴は命中率が著しく低いことを承知でかみなりを使った。しかし、元々命中精度が悪くなっていたこともあり、観鈴の攻撃は当たらなかった。そして、このターンでしんぴのまもりの効果は切れたのだった。
「マタドガス、ヘドロこうげき……」
4ターン目、前ターンはまひで技を出せなかった美凪嬢だったが、このターンは攻撃することが出来た。ヘドロこうげきはどくタイプの技で、相手を3割の確立でどくじょうたいに出来る。幸い、観鈴はどく状態にはならなかった。
「デンリュウ、かみなり!」
対し、観鈴の攻撃は運良くマタドガスに命中した。この攻撃により、マタドガスのHPは3分の1程度まで減った。
「にはは。これで次にかみなりパンチを当てればわたしの勝ちだよ」
「確かに、この展開では私が勝てる望みは少ないですね。それならば……観鈴さんを勝たせないまでです……」
「勝たせない? まさか!?」
「そのまさかです……。マタドガス、だいばくはつ」
5ターン目、自らの勝機が薄いと判断した美凪嬢は、だいばくはつを使い、観鈴のデンリュウ諸共ひんし状態になったのだった。
「成程、次の勝負で決めようってことだね?」
「はい。その通りです……。これで互いの手持ちポケモンは残り1体。事実上次が最終戦です……」
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「お願い、リザードン!」
「ウツボット、貴方が最後です……」
互いに最後の一体となった事実上の最終戦。観鈴はほのお、ひこうタイプのリザードン、美凪嬢はくさ、どくタイプのウツボットだった。
「よぉし! この勝負わたしが勝ったも同然だよ!!」
美凪嬢のポケモンを見た瞬間、観鈴はいち早く勝利宣言をした。観鈴が勝利宣言したのにはちゃんと理由がある。くさタイプの技はほのお、ひこう双方にこうかがいまひとつで、逆にほのお、ひこうタイプは双方ともくさタイプにこうかがばつぐんだった。
つまり、相性的には観鈴が圧倒的に有利だということだ。
「ここは小細工なしの力勝負だよ! リザードン、だいもんじ!!」
相性で圧倒的に有利ならば、力押しで一気に攻めるのみ。そう思った観鈴はほのおタイプの技だいもんじでいきなり美凪嬢にトドメを刺しに行ったのだった。この攻撃により、美凪嬢のウツボットのHPはあと10数ポイントを残すのみとなった。
「ウツボット、ねむりごな……」
例え相性で不利とはいえ、簡単には負けない。そんな思いが聞こえて来るかのように、美凪嬢はねむりごなを使い、観鈴のリザードンを眠らせたのだった。
「ウツボット、ヘドロばくだん」
その後美凪嬢はリザードンが眠っている間、どくタイプの技ヘドロばくだんで攻撃し続けた。どくタイプの技は、ほのお、ひこうタイプ双方に普通にダメージを与えることが出来る。観鈴のリザードンが起き出す前に勝負を着けるのが美凪嬢の狙いなのだろう。
「リザードン、かえんほうしゃ!」
しかし、リザードンのHPをある程度まで下げることが出来たものの、ひんし状態になる前に目覚め、美凪嬢のウツボットはリザードンのかえんほうしゃにより戦闘不能となったのだった。
こうして最後の一体を残し、観鈴は見事勝利を掴んだのだった。
「お見事です、観鈴さん。ですが、これで戦いが終わったわけではありません。この後観鈴さんはグランドチャンピオンと戦ってもらいます……」
「うん、戦う覚悟は出来てるよ。それで、チャンピオンさんはどこにいるのかな?」
「残念ながら、グランドチャンピオンはここにはいません。チャンピオンは、別の場所で観鈴さんを待ち続けています……」
そう言い、美凪嬢と佳乃嬢は、グランドチャンピオンが待ち構えている地、鍋島城跡へと観鈴を招待したのだった。
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「ここが最終決戦の地なんだね」
遠野博物館から歩いて数分、私達はグランドチャンピオンが待ち構えている鍋島城跡に到着した。
????「やっときましたね。おめでとう! このリーグを かちぬいたのは きみがはじめてです」
そんな時だった。どこからともなく我々に呼び掛ける声が聞こえて来た。
みすず「リーグ?」
????「わたしが かんがえた そうだいな ポケモンバトルの リーグです!」
ミスズ「どういうことだ?」
????「わたしは CPUとのバトルに あきあきしていました。 そこでたいじんせんをしょもうしたのです」
ミスズちん「なに かんがえてんだ!」
????「たいじんせんは ポケモンバトルをへんかくさせ おもしろくしてくれました。
だが それもつかのまのこと たいじんせんにもたいくつしてきました」
みすずちん「そこで リーグ…か?」
????「そう! そのとうり!! わたしは リーグを かちぬく ウィナーが ほしかったのです!」
みすず「なにもかも あんたが かいたすじがきだったわけだ」
????「なかなか りかいが はやい。 おおくの モノたちが ウィナーになれずに まけていきました。
まけるべき うんめいをせおった ちっぽけなそんざいが ひっしにたたかいぬいていく すがたは
わたしさえも かんどうさせるものがありました。わたしは このかんどうを
あたえてくれた きみにおれいがしたい! どんなのぞみでもかなえてあげましょう」
ミスズ「おまえのために ここまできたんじゃねえ! よくも おれたちを みんなをおもちゃにしてくれたな!」
????「それが どうかしましたか? すべては わたしが かんがえた リーグなのです」
みすず「おれは モノじゃない!」
????「グランドチャンピオンに ケンカをうるとは……どこまでも たのしい ひとだ!
どうしても やるつもりですね これも しょうしゃのサガか……
よろしい まけるまえに グランドチャンピオンのちから とくと めに やきつけておきなさーーい!!」
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「天知る、地知る、皆が知る! 遠野の地に降り立ったみちのくの美少女ことおてんばキツネのまこピー様の実力、とくと目に焼き付けておくのね!!」
噂のグランドチャンピオンの正体は、何のことはない、祐一の義理の妹に当たる真琴嬢だった。そもそも今回の大会は、私が祐一に観鈴を佳乃嬢と美凪嬢等と触れ合わせたいという話を持ち掛け、祐一が提案したものだった。
肝心の提案者である祐一は外せない用事があるから代理の者をよこすとは言っていたが、それが真琴嬢だったとは。
「しかし、その格好はどうにかならんのか?」
真琴嬢はヤケに露出度の高い水着を着ていた。いくら今が夏だからといっても、こんな公園のど真ん中で水着を着ているのは、狂気の沙汰でしかない。
「どう? カスミ電撃ピカチュウverよ。似合ってるでしょう?」
「何だその電撃なんたらは?」
「上連雀三平っていうエロ漫画家が天下の児童コミック誌、『コロコロコミック』に連載していた漫画よ。天下のコロコロで天下のポケモンをエロ漫画化して連載してたってことで、結構有名よ」
「まったく、どうしてお前はそんなどうでもいいことには詳しいんだ……」
確か真琴嬢はつい一年半前までは狐だった筈だが。一体どうすればたったそれ程の短期間でこんな偏向した知識を身に付けられるのだろう。
「初めまして、観鈴さん。私は祐一兄様の妹の真琴よ。よろしくね」
「祐一さんに妹さんがいるって話は聞いてたけど。こちらこそよろしく」
私のツッコミを半ば無視する形で、観鈴と真琴嬢は互いに挨拶を交わしたのだった。
「それにしても、観鈴さん。よく打ち合わせもしてないのに、会話を合わせられたわね。ちゃんと4人分の声まで使い分けて」
「にはは。台詞の言い回しから多分かみの台詞じゃないかって思って、アドリブで合わせてみたんだ。真琴さんも声がカスミそっくりで、すごく雰囲気が良かったよ」
「ありがとう。でも、最後の『おれは モノじゃない!』はいただけなかったわね。私は『リーグ』って言ったんだから、それに合わせた言葉が良かったわね」
「にはは。そこは適当な言葉が思い浮かばなかったから、仕方なく元台詞のまま通したんだよ。ゴメンね」
たった今出会ったばかりの二人だったが、いつのまにか意気投合していた。確かに二人の会話は事前に打ち合わせしているかと疑う程スムーズだった気がする。
「その格好からして、真琴さんはカスミ使いかな?」
「ご名答よ。手持ちのポケモンを変えたいなら今の内に変えておくといいわ。何を使うかまでは教えられないけど、大方の予想はつくでしょ?」
ここで試合前のポケモンの調整を認めさせたら、真琴嬢が不利にたたされるのは目に見えている。自分が不利になると分かっていて敢えて観鈴に戦闘準備をする機会を与えるとは、それは例えどんな準備をされた所でも勝ってみせるという、グランドチャンピオンを自称する真琴嬢の自信の表れなのだろうか。
「なら、お言葉に甘えて変えさせてもらうよ。わたしだってここまで勝ち抜いたんだから、簡単に負けたくないからね」
観鈴は意地を張らずに素直にポケモンの調整をした。その後、観鈴と真琴嬢は互いのゲームボーイをケーブルで繋ぎ、ここにポケモンリーグトオノ大会の最終決戦の幕が下ろされたのだった。
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「いっけ〜〜! マーイ・ステディ!!」
「頑張って、チコリータ!」
最終決戦の初戦、真琴嬢はみずタイプのタッツーを、観鈴はくさタイプのチコリータを出したのだった。
「みずタイプには、くさタイプ。王道中の王道ね」
「にはは。初戦から勝ちにいくよ」
みずタイプのポケモンはくさタイプの技に弱い。観鈴は相手の苦手属性を突くというポケモンの基本中の基本の戦法で挑んだのだった。
「そう簡単に事が運ぶかしらね? タッツー、メロメロ!」
「えっ? メロメロ!?」
メロメロとは異性のポケモンを5割の確立で攻撃出来なくさせるメロメロ状態にする技だ。真琴嬢のタッツーはオスで、観鈴のチコリータはメス。よって、真琴嬢の攻撃で観鈴のチコリータはメロメロ状態になってしまい、このターンは攻撃出来なかった。
(メロメロ状態はポケモンを交代すれば解除される。でも、相性はこっちの方が有利だし、みずタイプの技はくさタイプにこうかはいまひとつ。タッツーは一撃でチコリータを倒すことは出来ない。でもチコリーターのはっぱカッターなら当たれば一撃で倒すことも出来る。それなら……)
こちらが攻撃をしにくくはなったものの、依然有利な状況には変わらない。そう思った観鈴は手持ちポケモンを変えずに勝負に臨んだのだった。
「手持ちポケモンを変えなかったのは褒めてあげるわ。でもね、相性の良さを過信しているとイタイ目に遭うわよ! タッツー、りゅうのいぶき!!」
りゅうのいぶきはドラゴンタイプの技で、相手を3割の確立でまひ状態にさせる技だ。観鈴のチコリータは運悪くまひ状態になった。また、まひとメロメロは重複する為、観鈴はますます攻撃を出せなくなってしまった。
「がおっ、戻って、チコリータ!」
流石にここまで攻撃を出せなくなってはチコリータの勝利は難しい。そう思った観鈴は、止む無くチコリータを交代したのだった。
「賢明な判断ね。ここでチコリータを使い続けたら、どんなに相性が良くても勝てる見込みは薄かったわね」
チコリータはひんし状態になったわけではない。しかし、HPを4分の1程減らされ、交代してもまひ状態は解除されない。観鈴は初戦から出鼻を挫かれたのだった。
(どうしよう……。ガルーラはメスだからメロメロ状態にさせられるし、カイリューはドラゴンタイプだからりゅうのいぶきに弱いし……)
「デンリュウ、お願い!」
手持ちポケモンの内、ガルーラとカイリューは上記のような理由から使用できない。そう思った観鈴はでんきタイプのデンリュウを繰り出したのだった。
「くさタイプの次はでんきタイプ。どこまで行ってもベタベタの戦法ね。タッツー、えんまく!」
このターン、真琴嬢はえんまくで観鈴のポケモンの命中率を下げに来たのだった。
「デンリュウ、でんじは!」
そして観鈴は、相手をまひ状態にさせるでんじはを使ったのだった。
「例え相性で勝っていても、相手を状態異常にさせることは怠らない。相性の良さを驕らずに状態異常攻撃に出たのは称賛に値するわね」
「デンリュウ、かみなりパンチ!」
タッツー対デンリュウの二ターン目。真琴嬢のタッツーはまひ状態で攻撃が出来ず、観鈴のかみなりパンチは命中率が下げられていたこともあって、外れてしまったのだった。
「タッツー、りゅうのいぶき!」
そして3ターン目、観鈴の攻撃はまたもや外れ、今度は観鈴の方がまひ状態となったのだった。こうして最終決戦は、まだどちらも手持ちポケモンを失っていない状態で続くのだった。
ラストバトルを制するのは観鈴か、それとも真琴嬢か。このフルバトルの果てに勝利の栄光を掴むのはどちらだ!?
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…第弐拾七話完
※後書き
なんだかんだ言いまして、前回の更新から2ヶ月以上経過してしまいましたね。
さて、今回の美凪戦は竜頭蛇尾という感じになってしまいましたね。最初の方観鈴が苦戦する展開にしたいと思って書いたのはいいのですが、最後は観鈴が圧倒的に有利な戦況になってしまいましたので。まあ、話の展開からすればこれで良かった気もしますけど。
とりあえず遠野ポケモンバトルは次回で最終回です。今のペースですと、今年度中に終わらせるのも無理っぽくなりましたけど、何とか話を進めて行きたいですね。 |
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